河川点検士「河川に関する知識」対策
河川工学・河川構造物・水理の基礎を扱う分野です。河川の形態やセグメント区分、堤防・護岸・樋門などの施設、計画高水位・余裕高といった治水の基本概念が問われます。
収録問題数:52問(解説つき)/最終更新:2026年8月
「河川に関する知識」で実際に問われること
収録している52問から20問を、本番と同じ四肢択一の形で抜粋しました。各問の「正解と解説」を開くと、正解と、解答の根拠になる要点が読めます。
例1日本の国土と河川の特徴について、次の( )に当てはまる語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。 「日本の国土の( a )は山地及び丘陵地である。また、国土の約10%にすぎない洪水氾濫区域に全人口の( b )、資産の( c )が集中している。」
- 1.a:1/3、b:1/2、c:3/4
- 2.a:3/4、b:1/3、c:1/2
- 3.a:3/4、b:1/2、c:3/4
- 4.a:1/2、b:2/3、c:3/4
▶正解と解説
正解:3
日本の国土の約3/4は山地・丘陵地です。洪水氾濫区域(国土の約10%)には全人口の約1/2、資産の約3/4が集中しており、治水の重要性が特に高い国土構造となっています。
例2日本の河川の特徴に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.日本の河川は、欧米の河川と比較して流路延長が短く、河床勾配が急である。
- 2.日本の河川は、急峻な地形のため、降雨から洪水のピークに至るまでの時間が短い。
- 3.日本の河川は、欧米主要河川と比較して比流量(単位流域面積当たりの流量)が小さい。
- 4.日本の河川は、流域面積に対して流量の変動が大きく、洪水と渇水の差が激しい。
▶正解と解説
正解:3
日本の河川は欧米主要河川と比較して比流量が非常に大きいのが特徴です。急峻な地形・短い流路延長により、降雨が短時間で集中して流れ出るため、単位面積当たりの流量(比流量)は欧米河川の数倍に達します。
例3河川の「計画高水位(H.W.L)」と「堤防天端高」の関係について、最も適切なものはどれか。
- 1.堤防天端高は計画高水位と同じ高さに設定される。
- 2.堤防天端高は計画高水位から余裕高を差し引いた高さに設定される。
- 3.堤防天端高は計画高水位に余裕高を加えた高さ以上に設定される。
- 4.堤防天端高と計画高水位の関係は河川管理者が自由に設定できる。
▶正解と解説
正解:3
堤防天端高は計画高水位(H.W.L)に余裕高を加えた高さ以上に設定されます。余裕高は河川規模(計画高水流量)に応じて0.6〜2.0m程度が標準とされており、波浪・水面動揺等に対する安全代として確保されます。
例4堤防の主な決壊要因の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
- 1.越水・浸透・侵食
- 2.冠水・液状化・沈下
- 3.越波・凍結・乾燥収縮
- 4.冠水・越水・液状化
▶正解と解説
正解:1
堤防の主な決壊要因は「越水」「浸透(パイピング・すべり)」「侵食(洗掘)」の3つです。これらに繋がる変状を点検で早期に発見・対処することが堤防維持管理の基本です。
例5「高水敷」の説明として、最も適切なものはどれか。
- 1.堤防の天端(頂部)の水平面部分。
- 2.堤防の川側ののり面(堤外のり面)のこと。
- 3.低水路と堤防の間にある比較的平坦な土地で、平常時は水が流れず洪水時に湛水する区域。
- 4.河床の最も低い部分(深掘れ)のこと。
▶正解と解説
正解:3
高水敷(こうすいじき)は低水路(平常時に水が流れる部分)と堤防の間の平坦な土地です。平常時は陸地として公園・グラウンド等に使われますが、洪水時は水が流れる断面の一部となります。
例6一級河川の「指定区間」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.国土交通大臣が直轄で管理する区間。
- 2.国が指定した洪水浸水想定区域内の区間。
- 3.国土交通大臣が指定し、都道府県知事が管理を行う区間。
- 4.砂防法による指定を受けた上流区間。
▶正解と解説
正解:3
河川法第9条により、一級河川のうち国土交通大臣が指定した「指定区間」は都道府県知事(または政令市長)が管理します。指定区間外(重要な区間)は国土交通大臣が直轄管理します。
例7「護岸の根固工(ねがためこう)」の主な目的として、最も適切なものはどれか。
- 1.護岸表面の美観を保ち、景観を向上させること。
- 2.河川水の堤防への浸透を防ぐ遮水機能を果たすこと。
- 3.護岸の基礎部(脚部)の洗掘を防ぎ、護岸全体の安定を確保すること。
- 4.水面に浮遊するゴミ・流木を捕捉すること。
▶正解と解説
正解:3
根固工は護岸の基礎部(脚部)付近の河床に設置され、流水による洗掘から護岸基礎を保護します。根固工が損傷・沈下すると護岸基礎が露出・不安定化するため、重要な点検項目です。
例8「水制(みずせ)工」の主な機能として、最も適切なものはどれか。
- 1.河床に堆積した土砂を除去し、流下断面を確保する施設。
- 2.河川を横断して水位を調整し、上流側に水を貯める施設。
- 3.河道内に突出して設置し、流速・流向を制御して河岸侵食を防ぐ施設。
- 4.洪水時に河川水を農地へ導くための取水施設。
▶正解と解説
正解:3
水制は河道内に突出した構造物で、流れを制御して河岸・堤防ののり面への流速を軽減させ、侵食・洗掘を防ぐとともに流路の安定を図ります。透過型・不透過型・潜水型などがあります。
例9堤防の「余裕高」に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.余裕高は計画高水位に加算して堤防天端高を設定するための高さである。
- 2.余裕高は河川規模(計画高水流量)が大きいほど大きく設定される。
- 3.余裕高は風波・水面動揺・設計精度等に対する安全代である。
- 4.余裕高は堤防の幅(天端幅)と同じ意味で使われる。
▶正解と解説
正解:4
余裕高と天端幅は異なる概念です。余裕高は計画高水位から堤防天端までの高さ方向の安全代(0.6〜2.0m程度)、天端幅は堤防頂部の水平方向の幅(3〜12m程度)です。
例10「霞堤(かすみてい)」の特徴として、最も適切なものはどれか。
- 1.堤防の天端を霧(かすみ)が通りやすいよう低く設計した堤防形式。
- 2.コンクリートで全面的に被覆した近代的な堤防形式。
- 3.堤防の一部に開口部(霞口)を設け、洪水時に水を一時的に内側に流入させる遊水機能を持つ不連続堤防。
- 4.堤体に霞石(軽石)を使用した特殊な築堤工法。
▶正解と解説
正解:3
霞堤は上下流の堤防が一部重なり合う形で間に開口部(霞口)を持つ不連続堤防です。洪水時には霞口から水が内側に流入・遊水することで下流への洪水流を低減させる日本古来の治水技術で、各地に現存します。
例11堤防の天端幅に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.天端幅は計画高水流量が大きいほど広く設定される
- 2.天端幅は堤防高に関わらず一律3mと定められている
- 3.天端幅は余裕高と同じ概念であり、洪水時の安全を確保する
- 4.天端幅は堤内地の土地利用状況のみによって決定される
▶正解と解説
正解:1
天端幅は計画高水流量の規模に応じて定められており、流量が大きいほど広い天端幅が必要とされる。例えば計画高水流量が500m³/s未満では3m、10,000m³/s以上では7mなど、規模に応じた基準値がある(河川管理施設等構造令)。余裕高とは別の概念である。
例12内水と外水の説明として、最も適切なものはどれか。
- 1.内水とは堤防の内側(堤内地側)から発生する洪水であり、河川の増水に伴い排水が困難となった雨水による浸水をいう
- 2.外水とは堤防の外側(堤外地側)の降雨による浸水であり、排水ポンプにより防ぐことができない
- 3.内水氾濫は河川の破堤によってのみ発生する
- 4.外水氾濫は内水氾濫よりも必ず被害が小さい
▶正解と解説
正解:1
内水とは堤内地(市街地側)に降った雨が河川に排水できず浸水する現象であり、河川水位の上昇で重力排水ができなくなる場合に生じる。外水氾濫は河川が氾濫して堤外地から堤内地へ浸水する現象で、破堤や越水によって発生する。
例13河川の縦断測量と横断測量に関する説明として、最も不適切なものはどれか。
- 1.縦断測量では河床の高さや水面勾配を把握することができる
- 2.横断測量では河川の幅や流水断面積を把握することができる
- 3.縦断測量は河川の流れ方向に沿って行われる
- 4.横断測量は原則として河川の流れ方向に平行して行われる
▶正解と解説
正解:4
横断測量は河川の流れ方向に対して直角(横断方向)に行われるものであり、河川の流れ方向に平行するものではない。縦断測量は流下方向に沿って河床高・水面高などを測定し、横断測量は流下方向に直角に断面の形状を測定する。
例14橋梁・取水施設等の河川工作物に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.橋梁は河川区域外に設置されるため、河川管理者の許可は不要である
- 2.取水施設は河川法の規制対象外であり、自由に設置することができる
- 3.河川工作物は洪水時に流水の障害となる場合があるため、適切な管理が求められる
- 4.河川工作物の点検は河川管理者のみが実施する義務がある
▶正解と解説
正解:3
橋梁・取水施設・樋門等の河川工作物は、洪水時に流水の障害となったり、構造物の破損が河川管理に支障をきたす可能性があるため、適切な維持管理と点検が求められる。これらの設置には河川法に基づく許可が必要であり、工作物管理者による点検も義務付けられる。
例15土砂移動(流砂・砂州)に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.砂州は河川の流れによって土砂が堆積したものであり、固定砂州と移動砂州に分類される
- 2.流砂量は水の流れの強さ(掃流力)に関係しており、流速が大きいほど一般に多くなる
- 3.砂州の発達は河道の断面積を減少させ、洪水時の水位上昇の要因となることがある
- 4.砂州はすべて洪水時のみに形成され、平常時には必ず消失する
▶正解と解説
正解:4
砂州には固定砂州と移動砂州があり、固定砂州は河道の形状に起因して位置がほぼ固定されているものであり、平常時から存在する。移動砂州は洪水に伴って移動・変形するが、すべての砂州が洪水時のみに形成されるわけではない。
例16感潮区間に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.感潮区間では潮汐の影響を受けるため、河川水位が潮汐に応じて変動する
- 2.感潮区間とは河川上流部の急流区間を指す
- 3.感潮区間は必ず洪水氾濫が起こりやすい区間である
- 4.感潮区間では淡水のみが存在し、塩水は流入しない
▶正解と解説
正解:1
感潮区間とは潮汐の影響が及ぶ河川下流部の区間であり、満潮時には水位が上昇し干潮時には低下するなど、海の潮汐に応じて河川水位が変動する。このため、感潮区間では塩水と淡水が混合する汽水域となる場合がある。
例17山付き区間の堤防に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.山付き区間では山地が自然の堤防の役割を果たす場合があるが、浸食等の変状が生じることもあるため点検が必要である
- 2.山付き区間では堤防が不要なため、点検の対象外となる
- 3.山付き区間の岩盤は浸透に対して完全に安全であるため、漏水点検は不要である
- 4.山付き区間では余裕高の基準が通常の堤防と異なり、一律0.5m低く設定される
▶正解と解説
正解:1
山付き区間とは堤防が山地や丘陵と接続している区間をいい、山地が自然の堤防機能を果たす場合もある。しかし、山側からの湧水・浸透や岩盤の風化・侵食による変状が生じる可能性があるため、適切な点検が必要である。
例18河川のセグメント区分に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.セグメント1は扇状地に相当し、河床材料は砂が主体で河床勾配が緩い
- 2.セグメント2は谷底平野や扇状地からなり、河床材料は砂利・玉石が主体である
- 3.セグメント2は自然堤防帯に相当し、河床材料は砂が主体で河床勾配は1/1000程度より緩い
- 4.セグメントMは河口部の三角州で、河床材料は玉石が主体である
▶正解と解説
正解:3
河川は河床勾配と河床材料により上流からセグメント1(砂利・玉石、急勾配)、セグメント2(砂・砂利の自然堤防帯)、セグメント3(シルト・粘土の三角州)に区分される。セグメント2は自然堤防帯で河床材料は砂が主体、勾配は概ね1/1000程度より緩く蛇行しやすい。区分は河床変動や護岸計画の基礎となる。
例19堤防各部の名称に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.堤防の川表側ののり面を表のり面、堤内地側ののり面を裏のり面という
- 2.のり面の途中に設けられる平坦部を小段という
- 3.堤防のり尻部に沿って設けられる幅の狭い平坦部を犬走りという
- 4.堤防天端から堤内地側のり尻までの水平距離を堤脚という
▶正解と解説
正解:4
堤脚とは堤防のり面と地盤面が接する基部(のり尻部分)を指す名称であり、水平距離を表す用語ではない。表のり面・裏のり面、小段、犬走りはいずれも堤防各部の正しい名称である。各部の名称は点検・維持管理の基礎知識として重要である。
例20堤防の浸透・パイピング現象に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.パイピングとは降雨により堤体表面が侵食され洗掘される現象である
- 2.浸透により堤体内の水位が上昇すると、裏のり尻ですべり破壊が生じやすくなる
- 3.パイピングは外水位が低下したときに堤内側で発生しやすい
- 4.浸透対策としてのり面を不透水性材料で覆うと、堤体内の浸潤線は上昇する
▶正解と解説
正解:2
高水時に河川水が堤体や基礎地盤に浸透すると浸潤線が上昇し、裏のり尻付近で間隙水圧の増大によりすべり破壊(のり崩れ)が生じやすくなる。パイピングは浸透流により基礎地盤の土砂が噴出・流出して空洞を生じる現象で、外水位が高いときに堤内地側で発生する。これらは堤防決壊の主要因の一つである。
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