河川点検士「状態把握・点検」対策
点検の種類・方法・施設別の点検事項を扱う分野です。定期/出水後/地震後点検、目視点検の進め方、堤防・護岸・樋門・水門・堰・陸閘などの着目点が問われます。
収録問題数:53問(解説つき)/最終更新:2026年8月
「状態把握・点検」で実際に問われること
収録している53問から20問を、本番と同じ四肢択一の形で抜粋しました。各問の「正解と解説」を開くと、正解と、解答の根拠になる要点が読めます。
例1土堤の点検事項のうち、「法面・小段」における標準的な点検事項として、最も不適切なものはどれか。
- 1.亀裂、陥没、はらみ出し、法崩れ、侵食等の変状の有無。
- 2.張芝のはがれ等、堤防植生・表土の状態の異常の有無。
- 3.モグラ等の小動物の穴の集中による空洞化の有無。
- 4.堤防の設計図書に記載された設計断面との形状比較(断面測量)。
▶正解と解説
正解:4
標準的な日常点検は「目視その他適切な方法」が基本です。設計断面との比較(断面測量)は詳細点検(調査)に相当します。法面・小段の点検事項は亀裂・陥没・はらみ出し・法崩れ・植生異常・小動物穴・樹木侵入・侵食(ガリ)等が標準です。
例2土堤の「裏法尻部(堤脚付近)」の点検事項として、最も適切なものはどれか。
- 1.法面の草の種類と密度の確認。
- 2.堤防天端の幅の計測。
- 3.堤脚付近の排水不良による浸潤状態・漏水・噴砂の有無、堤脚保護工の変形の確認。
- 4.護岸の目地開き量の計測。
▶正解と解説
正解:3
裏法尻部(川裏のり尻付近)の点検項目は、排水不良による浸潤状態・しぼり水・漏水・噴砂の有無、堤脚保護工の変形、ドレーン工の目詰まり・濁水排水、湿性植物の群生などです。漏水・噴砂はパイピングの兆候として特に重要です。
例3堤防の「モグラ等の小動物の穴」に関する点検・評価の説明として、最も適切なものはどれか。
- 1.小動物の穴は小さいため治水上の問題とならず、点検項目に含まれない。
- 2.小動物の穴は自然現象であり、行政として対応する法的根拠がない。
- 3.穴の存在が確認できる段階(b:要監視)から、穴が堤体深く掘られ機能に支障が生じるもの(d:措置)まで段階的に評価する。
- 4.穴が確認された場合は常にd評価(措置段階)として即時補修する。
▶正解と解説
正解:3
点検・評価要領では小動物の穴は「穴が確認できる」段階ではb(要監視)、穴周辺の崩壊進展が予想される段階ではc(予防保全)、穴に起因して形状変化が現れ機能に支障が生じる場合はd(措置段階)と評価します。
例4護岸の点検において「はらみ出し」の評価(b:要監視段階)の判定目安として、最も適切なものはどれか。
- 1.はらみ出しによる護岸の破損が生じている状態。
- 2.天端保護工が流出した状態。
- 3.はらみ出しによる目地の開きやクラックが2mm以上(裏込材の粒径以下)・段差が目視で分かる程度の状態。
- 4.はらみ出しによる段差が石材・ブロック厚の1/2以上の状態。
▶正解と解説
正解:3
護岸のはらみ出しの評価は、「目地開き・クラック2mm以上(裏込材粒径以下)・段差が目視で分かる程度」がb(要監視段階)の目安です。段差が石材・ブロック厚の1/2以上になるとc(予防保全段階)、破損が生じるとd(措置段階)です。
例5鋼矢板護岸の点検事項として定められているものの組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
- 1.鋼矢板の変形・はらみ出し・破損、腐食(サビ・孔・肉厚減少)、継手部の開き・欠損、背後地盤の沈下・陥没、笠コンクリートの変形・破損。
- 2.鋼矢板の色の変化と表面の清潔さ。
- 3.鋼矢板の製造年と施工業者の記録確認。
- 4.鋼矢板周辺の植栽の状況と水質の変化。
▶正解と解説
正解:1
点検・評価要領では鋼矢板護岸の変状種別として[19]変形・はらみ出し・破損、[20]腐食(サビ・孔・肉厚減少)、[21]継手部の開き・欠損、[22]背後地盤の沈下・陥没、[23]笠コンクリートの変形・破損の5種類が定められています。
例6「出水後点検(出水後に実施する点検)」の対象として、最も適切なものはどれか。
- 1.陸閘のみを対象として実施する。
- 2.出水後点検は任意であり、実施義務はない。
- 3.陸閘を除く全項目(土堤・護岸・樋門等構造物周辺の堤防・根固工・水制工など)を対象として実施することを基本とする。
- 4.護岸と水門のみを対象とする。
▶正解と解説
正解:3
出水後点検は陸閘を除く全項目を対象として、「流水や降雨の作用で発生する可能性のある変状について実施することを基本」としています。なお、出水後点検は「各河川で設定した出水規模(氾濫注意水位超過等)を上回る出水があった場合」に実施します。
例7樋門・樋管の「構造物本体(函体・函体継手部)」の点検事項として、最も適切なものはどれか。
- 1.函体の色と外観の美しさのみ。
- 2.函体の施工業者と建設年度の確認のみ。
- 3.函体の撓み・折れ曲がり・継手の開き・クラックの変化の有無、土砂堆積・植生繁茂の有無、不同沈下・傾き等。
- 4.函体周辺の草刈り状況のみ。
▶正解と解説
正解:3
樋門・樋管の函体・継手部の点検事項は、コンクリート・鋼構造の劣化・腐食、不同沈下・傾き・接合部の隙間や吸い出し、函体の撓み・折れ曲がり・継手開き・クラック、土砂堆積・植生繁茂の異常な発生などです。
例8「堤防等河川管理施設及び河道の点検・評価要領」に定める変状の写真撮影の方法として、最も適切なものはどれか。
- 1.変状の記録写真は任意であり、撮影しなくてもよい。
- 2.近景写真のみで足りる。
- 3.変状を写真撮影することを基本とし、変状の全体的な規模を確認できる全景写真と変状の程度を確認できる近景の両方を撮影する。
- 4.全景写真のみで足りる。
▶正解と解説
正解:3
点検・評価要領では「点検は変状を写真撮影することを基本とし、変状の全体的な規模を確認できる全景写真と変状の程度を確認できる近景を撮影する」と規定しています。両方の撮影が求められます。
例9土堤の変状「寺勾配(じこうばい)」の説明として、最も適切なものはどれか。
- 1.堤防ののり面が本来の勾配より急勾配になった変状で、主に沈下や法すべりにより生じる。
- 2.堤防天端が法尻側に向かって傾斜(排水勾配)を持つ状態。
- 3.法面に寺の石段のような階段状の変形が生じた状態。
- 4.堤防天端から川側ののり面にかけて緩勾配になった状態。
▶正解と解説
正解:1
寺勾配とは、本来は所定の勾配で整形されているはずのり面が、法すべり・沈下等の原因により本来の設計勾配より急勾配になった変状です。道路占用のための摺り付けにより生じることもあるため、評価の際は履歴確認も重要です。
例10「堤防等河川管理施設及び河道の点検・評価要領」が対象とする施設のうち、機械設備・電気通信施設(水門のゲート機器等)の点検について、最も適切なものはどれか。
- 1.同要領の対象内であり、詳細な点検方法が定められている。
- 2.機械設備の点検は不要とされている。
- 3.同要領の対象外であり、別途定められた規程等(河川用ゲート設備点検・整備標準要領等)に従い実施する。
- 4.機械設備の点検は国土交通省本省のみが実施できる。
▶正解と解説
正解:3
同要領では「堰、水門、樋門等の機械設備及び電気通信施設は対象外」と明示されています。これらは「河川用ゲート・河川ポンプ設備点検・整備・更新マニュアル(案)」等の別要領に従い点検します。
例11護岸天端保護工の点検に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.護岸天端保護工の点検は堤防本体の点検とは完全に独立して行われ、護岸の点検範囲に含まれない
- 2.護岸天端保護工の欠損・沈下・変形は護岸点検の対象であり、発見した場合は記録・評価する
- 3.天端保護工の点検は専門業者のみが実施できる
- 4.天端保護工のひび割れはいかなる場合もa評価となる
▶正解と解説
正解:2
護岸の天端保護工は護岸と堤防法面の接合部に設置される重要な部材であり、欠損・沈下・変形等の変状は護岸点検の対象となる。天端保護工の不具合は堤防法面への雨水侵入や護岸の変状の起点となるため、適切に記録・評価する必要がある。
例12水門のゲートおよび戸当たりの点検に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.ゲートの腐食・変形は漏水の原因となるため点検の対象である
- 2.戸当たりの変形や腐食はゲートの密閉性に影響するため確認が必要である
- 3.ゲートの開閉動作確認は機械設備の点検に含まれる
- 4.ゲートの外観点検は目視では困難なため実施不要である
▶正解と解説
正解:4
水門ゲートの外観点検は、腐食・変形・塗装の劣化・損傷等を目視により確認することが基本であり、点検の重要な構成要素である。ゲートの状態は洪水時の止水機能に直結するため、外観目視点検を省略することは適切ではない。
例13堰の点検に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.堰は常時静水圧しかかからないため、洗掘・沈下の点検は不要である
- 2.堰の堰柱・堰床の洗掘・沈下・亀裂は点検対象であり、出水後には特に念入りに確認する
- 3.堰の点検は管理者でなくても誰でも自由に実施できる
- 4.堰の点検結果は非公開が原則であり、記録の保管も不要である
▶正解と解説
正解:2
堰は洪水時に流水の激しい作用を受けるため、堰柱・堰床・エプロン等の洗掘・沈下・亀裂・変形は重要な点検対象である。特に出水後には変状が生じやすいため、念入りな確認が必要である。点検結果は適切に記録・管理される。
例14陸閘の点検に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.陸閘は洪水時に使用しないため、点検の対象外である
- 2.陸閘の扉体・戸当たり・操作機構の状態は点検対象であり、洪水時に確実に閉鎖できるかを確認する
- 3.陸閘の点検は年に1度実施すれば十分であり、出水時の動作確認は不要である
- 4.陸閘は構造が単純なため、専門知識がなくても誰でも適切に点検できる
▶正解と解説
正解:2
陸閘は洪水時に道路等の開口部を閉鎖して浸水を防ぐ重要な施設であり、扉体・戸当たり・操作機構(ハンドル・ネジ機構等)の状態確認が点検対象となる。洪水時に確実に閉鎖操作ができるかの動作確認も点検の重要な要素である。
例15河道の点検(土砂堆積・樹木)に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.土砂の堆積により河道断面が縮小すると、洪水時の水位上昇につながる
- 2.樹木の繁茂により流水抵抗が増大し、洪水時の水位上昇を招く場合がある
- 3.河道内の土砂堆積の点検は河川点検の対象外であり、別途調査が必要
- 4.樹木が根を張ることで堤体に空洞が生じる可能性があるため、樹木の状況把握は重要である
▶正解と解説
正解:3
河道の土砂堆積は洪水時の流下能力に直接影響するため、河川点検の重要な対象である。土砂の堆積状況や樹木の繁茂状況は、洪水の安全な流下に関わることから、定期点検および出水後点検で確認すべき事項である。
例16護岸コンクリートの浮き上がりを発見した場合の点検記録の内容として、最も適切なものはどれか。
- 1.浮き上がりの有無のみを記録し、程度・位置については記録しなくてよい
- 2.発生位置・規模(延長・浮き上がり量)・写真を含め、詳細に記録する
- 3.コンクリートの浮き上がりはa評価であるため、特段の記録は不要である
- 4.浮き上がりが発生した場合は直ちに工事を行い、点検記録への記載は不要である
▶正解と解説
正解:2
護岸コンクリートの浮き上がりを発見した場合は、発生位置(距離標等で特定)・規模(延長・浮き上がり量等)・写真等を詳細に記録する。変状の記録は適切な評価区分の設定と補修計画の立案に不可欠であり、経年変化の把握にも活用される。
例17出水後点検で特に重点的に確認すべき箇所として、最も適切な組み合わせはどれか。
- 1.裏法尻部の漏水・噴砂の有無、護岸の変状(沈下・はらみ出し・欠損等)
- 2.堤体の草刈り状況と堤防天端の舗装の色むら
- 3.河道内の水質と魚類の生息状況
- 4.堤防の天端幅の測量値と設計値の差異
▶正解と解説
正解:1
出水後点検では、洪水時の浸透水に伴う裏法尻部の漏水・噴砂の有無や、流水の作用による護岸の変状(沈下・はらみ出し・欠損・洗掘等)を重点的に確認することが重要である。これらは洪水後に生じやすく、早期発見・対処が堤防の安全性維持に不可欠である。
例18河川管理施設の点検の種類のうち、洪水・高潮等による施設の被災状況を把握するために、出水終了後にできるだけ速やかに実施する点検として最も適切なものはどれか。
- 1.定期点検
- 2.出水期前点検
- 3.出水後点検
- 4.地震後点検
▶正解と解説
正解:3
出水後点検は、洪水や高潮等の出水が終了した後、できるだけ速やかに被災状況を把握するために行う点検である。被災箇所の早期発見と応急対策の判断を目的とする。出水期前点検は出水期に備えて事前に行う点検であり、目的が異なる。
例19堤防の目視点検の基本的な方法に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.天端・表のり面・裏のり面・のり尻を漏れなく観察する
- 2.変状は発見した位置を距離標等で記録する
- 3.異常がないと予想される区間は観察を省略してよい
- 4.前回点検結果と比較しながら変状の進行を確認する
▶正解と解説
正解:3
目視点検は堤防の全延長を対象に漏れなく実施することが原則であり、異常がないと予想されるからといって観察を省略してはならない。変状は距離標等で位置を特定して記録し、過年度の結果と比較して進行性を評価することが重要である。
例20堤防天端の点検事項として、最も不適切なものはどれか。
- 1.天端の亀裂・段差・陥没の有無
- 2.天端の縦断方向の不陸・わだち掘れ
- 3.天端舗装のひび割れ・ポットホール
- 4.樋門ゲートの開閉装置の作動状況
▶正解と解説
正解:4
堤防天端の点検では、亀裂・段差・陥没、縦断的な不陸やわだち掘れ、舗装のひび割れ等を確認する。樋門ゲートの開閉装置の作動状況は樋門・水門等の機械設備の点検事項であり、堤防天端そのものの点検事項ではない。
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