河川点検士「維持管理対策」対策
補修・対策と維持管理の進め方を扱う分野です。浸透・侵食対策、護岸・樋門の補修、堆積土砂・樹木の管理、サイクル型維持管理や記録の活用が問われます。
収録問題数:49問(解説つき)/最終更新:2026年8月
「維持管理対策」で実際に問われること
収録している49問から20問を、本番と同じ四肢択一の形で抜粋しました。各問の「正解と解説」を開くと、正解と、解答の根拠になる要点が読めます。
例1「堤防等河川管理施設及び河道の点検・評価要領」に定める「維持管理計画の見直し」の頻度として、最も適切なものはどれか。
- 1.毎年必ず見直しを実施する。
- 2.10年に1回見直せばよい。
- 3.概ね5年ごとに河川維持管理計画の内容を見直す。
- 4.変状が発生した場合のみ見直す。
▶正解と解説
正解:3
点検・評価要領のフロー図に「概ね5年ごとに河川維持管理計画の内容を見直す」と明記されています。点検→評価→対策の繰り返しサイクルとともに、定期的な計画見直しにより維持管理の質を向上させます。
例2堤防の「侵食(ガリ)・植生異常」の変状種別[11]について、d(措置段階)の評価となる状態として、最も適切なものはどれか。
- 1.堤体に軽微なガリが生じている状態。
- 2.堤体植生に異常があり堤体のゆるみが確認されるが、詳細点検が必要な段階。
- 3.侵食(ガリ)に起因して耐侵食機能が失われ、堤防機能に支障が生じている状態。
- 4.裸地化しているが堤防の機能に支障は生じていない状態。
▶正解と解説
正解:3
変状種別[11](侵食・植生異常)においてd(措置段階)となるのは「侵食(ガリ)に起因して耐侵食機能が失われ、堤防機能に支障が生じている状態」です。堤体のゆるみが確認される場合はc(詳細点検が必要)の評価となります。
例3「d評価(措置段階)」の変状に対する対策の考え方として、最も適切なものはどれか。
- 1.次の定期点検まで経過を観察する。
- 2.5年以内に補修計画を策定すれば足りる。
- 3.速やかに補修又は更新等の適切な対策を実施する(次期出水期までに間に合わない場合は応急対策を実施する)。
- 4.d評価でも機能への支障が軽微であれば放置してよい。
▶正解と解説
正解:3
d(措置段階)では「堤防等河川管理施設の機能に支障が生じている」ため、速やかに補修・更新等の対策が必要です。次期出水期までに間に合わない場合は暫定対策を含む応急対策を実施します(総合的な評価を待たず実施)。
例4「c評価(予防保全段階)」の変状に対する対策の考え方として、最も適切なものはどれか。
- 1.即時補修が義務付けられており、翌日中に工事着手しなければならない。
- 2.c評価は軽微であるため対策不要とする。
- 3.変状の進行状況・損傷規模・経済性等を総合的に判断し、適切な対策を計画的に実施する。
- 4.c評価は毎年必ず大規模補修を実施しなければならない。
▶正解と解説
正解:3
c(予防保全段階)は機能に支障は生じていないが予防保全の観点から対策が望ましい状態です。変状の進行状況・規模・経済性等を総合判断し、適切な対策を計画的に実施します。発生原因不明等の場合は詳細点検を実施します。
例5「b評価(要監視段階)」の変状に対する対策の考え方として、最も適切なものはどれか。
- 1.速やかに全面的な大規模補修を実施する。
- 2.b評価では何もしなくてよい。
- 3.必要に応じて点検計画を見直し、施設を継続的に監視する(軽微な補修を含む)。
- 4.b評価では国に報告して対応を待つだけでよい。
▶正解と解説
正解:3
b(要監視段階)は機能に支障はないが進行する可能性のある変状が確認された状態です。必要に応じて点検計画を見直し継続的に監視します。軽微な補修を実施することも含まれます。
例6堤防の「樹木の侵入」に関する点検・評価の説明として、最も適切なものはどれか。
- 1.草刈り機等で容易に伐採可能な丈の低い樹木はb(要監視)、樹木が成長し堤防機能に支障が生じる恐れのあるものはc(予防保全)、樹木侵入に起因して形状変化が現れ機能に支障が生じる場合はd(措置)と評価する。
- 2.樹木は自然環境保護のため、点検においても伐採推奨はしない。
- 3.すべての樹木を発見次第すぐにd(措置)として緊急伐採する。
- 4.樹木の侵入は点検・評価要領の対象外である。
▶正解と解説
正解:1
土堤の樹木侵入(変状種別[10])は、草刈り機等で容易に処理できる段階がb、成長して機能に支障が生じる恐れがある段階がc、実際に形状変化が生じ機能に支障が出た場合がd評価となります。段階的な評価と対応が必要です。
例7「堤防等河川管理施設及び河道の点検・評価要領」において、空洞や陥没・漏水・噴砂等が確認された場合の対応として、最も適切なものはどれか。
- 1.速やかに詳細点検(調査を含む)を実施するなど早期対策に努める。
- 2.次回の定期点検まで経過観察する。
- 3.他の変状と同様にb評価として監視を続ける。
- 4.補修計画を5年以内に策定すればよい。
▶正解と解説
正解:1
同要領では「空洞や陥没の発生及び漏水や噴砂等のような、堤体土砂の吸い出しの予兆や痕跡については、被災そのものを示しているため、速やかに詳細点検(調査を含む)を実施するなど早期対策に努める」と定めています。
例8「河川維持管理計画」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.河川維持管理計画は点検・評価・対策のPDCAサイクルの基本となる計画であり、概ね5年ごとに内容を見直す。
- 2.河川維持管理計画は作成が任意であり、作成しなくても河川管理上の問題はない。
- 3.河川維持管理計画は100年以上の超長期計画として策定する。
- 4.河川維持管理計画は河川整備計画と全く同じ内容である。
▶正解と解説
正解:1
河川維持管理計画は、点検計画・評価・対策等の維持管理の基本方針を定める計画です。PDCAサイクルを通じた継続的改善の基盤となります。点検・評価要領では概ね5年ごとの見直しが定められています。
例9「堤防等河川管理施設及び河道の点検・評価要領」において、変状箇所の情報を「重要水防箇所」と合わせて活用する目的として、最も適切なものはどれか。
- 1.出水時の要注意箇所として活用し、洪水時の適切な対応(巡視強化・水防活動等)に役立てるため。
- 2.予算申請の根拠資料として活用するためのみ。
- 3.変状箇所の記録を河川史として保存するため。
- 4.変状箇所情報を報道機関に提供するため。
▶正解と解説
正解:1
点検・評価要領では「変状箇所は重要水防箇所とならび、出水時の要注意箇所として活用する」と定めています。平常時の維持管理の成果を洪水対応にも活かす仕組みです。
例10堤防補修における浸透対策工の種類に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.浸透対策工には、ドレーン工(裏のり尻部の排水施設)や腹付け工(堤体の強化)等がある
- 2.浸透対策工はコンクリート護岸の設置のみであり、堤体内部への対策は行わない
- 3.浸透対策工は一律に矢板打設で対応する
- 4.浸透対策工は出水時のみ効果を発揮する仮設的な工法である
▶正解と解説
正解:1
堤防の浸透対策工としては、裏のり尻部に設けて浸透水を速やかに排水するドレーン工、堤体内の浸透経路を遮断する遮水工(シート・矢板等)、堤体断面を拡大して安定性を高める腹付け工・天端拡幅工等がある。変状の状況や原因に応じて適切な工法を選択する。
例11草刈りの目的と頻度に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.草刈りは堤防法面の変状(侵食・漏水・モグラ穴等)を目視で確認しやすくする目的がある
- 2.草刈りは堤防法面の植生を適切に管理し、法面の保護機能を維持する目的がある
- 3.草刈りの頻度は河川管理者が地域の気候・草の繁茂状況等を踏まえて設定する
- 4.草刈りを実施すると堤防法面が露出して侵食が進むため、草刈りは原則として禁止されている
▶正解と解説
正解:4
草刈りは堤防法面の変状(侵食・漏水・亀裂・モグラ穴等)を目視点検しやすくするとともに、過繁茂による法面の弱体化を防ぎ、植生管理によって法面の保護機能を維持する重要な維持管理作業である。草刈りが禁止されているという規定はなく、適切な頻度・時期で実施することが求められる。
例12河道の浚渫(しゅんせつ)および除草に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.浚渫は河道内の土砂を除去して流下断面を確保し、洪水の安全な流下を維持する目的で実施される
- 2.浚渫は堤防の天端にのみ適用され、河道内の土砂除去には使用しない
- 3.河道内の除草は生態系に影響するため一切実施できない
- 4.浚渫は気候に関係なく、一年中実施することが義務付けられている
▶正解と解説
正解:1
浚渫は河道内に堆積した土砂を除去することで流下断面を確保し、洪水時の水位上昇を抑制して治水安全度を維持する目的で実施される。河道内の除草(草刈り・伐採等)も流水の抵抗を低減し、流下能力を維持するための維持管理作業であり、生態系への配慮を行いながら適切に実施される。
例13陸閘の操作・維持管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.陸閘は自動操作のみが認められており、手動操作は禁止されている
- 2.陸閘の操作方法・責任者・操作のタイミング等を定めた操作規則を整備し、洪水時に確実に閉鎖できる体制を維持することが重要である
- 3.陸閘は一度設置すれば維持管理は不要であり、修繕の必要はない
- 4.陸閘の操作訓練は法律上禁止されており、実際の洪水時のみ操作できる
▶正解と解説
正解:2
陸閘は洪水時に確実かつ迅速に閉鎖操作できることが不可欠であり、操作規則(誰が・いつ・どのように操作するか)の整備、操作訓練の実施、扉体・操作機構の定期的な維持管理が重要である。平常時から維持管理・訓練を怠ると洪水時に機能不全となる危険性がある。
例14堤防補修における侵食対策工に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.侵食対策工は堤防天端の舗装改修のみをいう
- 2.侵食対策工には、護岸の設置・補修、根固工の補充、法面被覆工の施工等があり、流水による堤防法面の侵食を防止する
- 3.侵食対策工は流速が遅い区間のみに適用され、急流区間には不要
- 4.侵食対策工を施工した後は永続的に効果が継続するため、点検・維持管理は不要である
▶正解と解説
正解:2
侵食対策工は流水・波浪等による堤防法面・堤脚部の侵食を防止するための工法群であり、護岸(コンクリートブロック・石張り等)の設置・補修、根固工の補充・追加、法面被覆工の施工等が含まれる。施工後も定期的な点検を継続し、侵食の再発や工法の変状を確認することが必要である。
例15河川維持管理におけるサイクル型維持管理の考え方として、最も適切なものはどれか。
- 1.一度対策を実施すれば以後の点検は不要であり、次の被災時まで放置してよい
- 2.状態把握(点検・調査)→評価・診断→対策→記録のサイクルを継続的に繰り返し、得られた知見を次の計画に反映する
- 3.対策は常に恒久対策のみを行い、応急対策は維持管理の対象外とする
- 4.記録は対策を実施した箇所のみ残し、異常のなかった箇所は記録しない
▶正解と解説
正解:2
サイクル型維持管理は状態把握・評価・対策・記録を繰り返すPDCA的な考え方であり、得られた情報を次サイクルの計画に反映して継続的に管理水準を高める。異常がなかった箇所も含めて記録を残すことが、経年変化の把握や評価の基礎となる。
例16河川維持管理計画の構成・記載事項に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.維持管理の目標や対象区間、想定される変状を記載する
- 2.点検の種類・頻度・時期や点検結果の評価区分の考え方を記載する
- 3.堆積土砂掘削や樹木伐採などの対策の基本的な方針を記載する
- 4.個々の住民の氏名と連絡先を網羅した名簿を必須記載事項として記載する
▶正解と解説
正解:4
河川維持管理計画には管理目標・対象区間・想定変状、点検の種類や頻度、評価区分、対策方針などを記載する。個人住民の氏名・連絡先を網羅した名簿は計画の必須記載事項ではなく、不適切である。
例17河川カルテ・河川管理台帳による記録管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.河川カルテは点検・対策の履歴を施設ごとに時系列で蓄積し、経年的な変状の進行把握や評価に活用する
- 2.河川カルテは一度作成すれば更新の必要はない
- 3.台帳は工事完成時のみ作成し、その後の変状や補修は記録しない
- 4.記録は紙媒体に限られ、電子化して管理してはならない
▶正解と解説
正解:1
河川カルテは施設ごとに点検結果や対策履歴を時系列で蓄積し、経年変化の把握や次の評価・対策判断に活用する記録である。点検や補修のたびに更新を続けることが重要で、電子化による効率的な管理も推進されている。
例18堤防の補修工法に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.腹付け盛土は堤体断面を拡大して浸透やすべりに対する安全性を高める工法である
- 2.嵩上げは堤防高が不足する場合に天端を高くする工法である
- 3.断面復旧は侵食や崩壊で失われた堤体断面を盛土等により回復させる工法である
- 4.腹付け盛土は堤体内の含水状態にかかわらず、急速かつ高く締固めずに盛り立てるほど安定する
▶正解と解説
正解:4
腹付け盛土・嵩上げ・断面復旧はいずれも堤防断面に関わる補修工法である。腹付け盛土は適切な含水比管理と十分な締固めが安定の前提であり、締固めずに急速・高く盛り立てるほど安定するという記述は誤りである。
例19コンクリート護岸のひび割れ(クラック)や目地の補修に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.微細なひび割れには樹脂やセメント系材料の注入により、ひび割れ内部を充填して止水・一体化を図る
- 2.ひび割れは見栄えの問題にすぎないため、幅にかかわらず一切補修しない
- 3.目地の充填材が劣化・脱落しても、背面土砂の吸出しには関係しないため放置してよい
- 4.ブロックの欠損は周辺ブロックごと全面撤去しなければ部分補修できない
▶正解と解説
正解:1
護岸のひび割れには樹脂注入やセメント系材料の注入により内部を充填し、止水と一体性の回復を図る。目地材の劣化・脱落は背面土砂の吸出しや空洞化の原因となるため補修が必要で、ブロック欠損は損傷範囲に応じた部分補修も可能である。
例20堤防の浸透対策として用いられる工法と機能の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
- 1.ドレーン工 — 堤体・基礎地盤に浸透した水を速やかに排水し浸潤面を低下させる
- 2.遮水矢板 — 堤内地側からの越水を防ぐために天端に設置する
- 3.断面拡大(腹付け) — 堤防の高さのみを増し浸透経路には影響しない
- 4.ドレーン工 — 河川水の浸入を完全に遮断し堤体を乾燥状態に保つ
▶正解と解説
正解:1
ドレーン工は堤体や基礎地盤に浸透した水を排水し浸潤線を低下させてすべりに対する安全性を高める。遮水矢板は浸透経路を遮断・延長する工法、断面拡大は浸透経路を長くして安全性を高める工法であり、各機能の対応が正しいのはドレーン工の排水機能である。
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