コンクリート診断士「維持管理・基準」対策
維持管理のサイクル、点検の種類、予防保全とLCC、アセットマネジメント、コンクリート標準示方書(維持管理編)や各種基準・診断技術者の役割を扱う分野です。
収録問題数:22問(解説つき)/最終更新:2026年8月
「維持管理・基準」で実際に問われること
収録している22問から20問を、本番と同じ四肢択一の形で抜粋しました。各問の「正解と解説」を開くと、正解と、解答の根拠になる要点が読めます。
例1コンクリート構造物の維持管理の基本的なサイクルとして、最も適切なものはどれか。
- 1.設計→施工→点検→補修
- 2.点検(調査)→診断(評価・判定)→対策→記録
- 3.劣化予測→補強→撤去→再構築
- 4.品質管理→出来形管理→検査→引渡し
▶正解と解説
正解:2
維持管理は点検(調査)によって状態を把握し、診断(劣化機構の推定・健全度の評価・予測)を行い、必要な対策を実施し、それらを記録に残すというサイクルを繰り返す。記録は次の点検・診断に活用され、継続的な維持管理を支える。
例2予防保全と事後保全に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.予防保全は劣化が顕在化する前に対策を行うため、一般に1回あたりの補修費用は小さく済む傾向がある
- 2.事後保全は変状が顕在化してから対策を行うため、第三者被害や機能停止のリスクが高くなる場合がある
- 3.予防保全は事後保全に比べ、ライフサイクルコストを低減できる可能性が高い
- 4.予防保全は事後保全に比べ、構造物の供用期間全体での補修回数が必ず少なくなる
▶正解と解説
正解:4
予防保全は早期かつ軽微な段階で対策するため1回あたり費用は小さく、LCC低減や第三者被害抑制に有利となる。しかし計画的に複数回の小規模補修を行うため、供用期間全体の補修回数は事後保全より多くなることもあり、必ず少なくなるとは言えない。
例3点検の種類に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.初期点検は、地震や台風などの異常事象の発生後に臨時に行う点検である
- 2.定期点検は、あらかじめ定めた一定の間隔で計画的に実施する点検である
- 3.緊急点検は、供用開始前に初期状態を把握するために行う点検である
- 4.日常点検は、足場を組んで変状を詳細に計測する高度な点検である
▶正解と解説
正解:2
定期点検は一定間隔で計画的に行う点検である。初期点検は供用開始前後に初期状態を把握する点検、緊急点検・臨時点検は地震・台風など異常事象後に行う点検、日常点検は通常巡視程度の頻度の高い点検であり、足場を要する詳細計測は詳細点検に該当する。
例4ライフサイクルコスト(LCC)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.LCCは初期建設費だけでなく、維持管理費や解体撤去費まで含めた総費用である
- 2.予防保全的な維持管理はLCCの低減に寄与する場合が多い
- 3.LCCを評価する際、将来発生する費用は割引率を用いて現在価値に換算することがある
- 4.LCCは初期建設費を最小化することのみを目的とする指標である
▶正解と解説
正解:4
LCCは初期建設費に加え、点検・補修・補強などの維持管理費、解体撤去費を含む供用期間全体の総費用を指す。将来費用は割引率で現在価値換算する。目的は総費用の最適化であり、初期建設費の最小化のみを目的とする指標ではない。
例5アセットマネジメントに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.個別構造物の変状を1件ずつ補修することのみを指す概念である
- 2.多数の施設群を対象に、限られた予算の中で効率的に維持管理を行う経営的・体系的な取組みである
- 3.構造物の新設時の構造計算を最適化する設計手法である
- 4.点検記録を保存せずに現場判断で対応する管理方式である
▶正解と解説
正解:2
アセットマネジメントは、橋梁・トンネルなど多数の社会資本(アセット)を対象に、限られた予算・人員の中で施設全体の機能を長期的に維持するための経営的・体系的な管理手法である。点検データに基づく予算配分や優先順位付けを含む。
例6土木学会「コンクリート標準示方書(維持管理編)」の枠組みに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.維持管理は、点検・劣化予測・評価および判定・対策などの行為から構成される
- 2.劣化機構ごとに標準的な点検・評価の考え方が示されている
- 3.構造物の要求性能と性能評価の考え方に基づいて維持管理を行う
- 4.維持管理計画は一度策定したら供用期間中に見直してはならない
▶正解と解説
正解:4
維持管理編では、要求性能を満たすことを目的に、点検・劣化予測・評価判定・対策などを体系的に行う枠組みが示される。維持管理計画は点検・診断結果や社会的要求の変化に応じて適宜見直すべきものであり、固定不変ではない。
例7道路橋の定期点検要領(法定点検)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.近接目視によらず遠望目視のみで判定することが原則とされている
- 2.おおむね5年に1回の頻度で実施することが基本とされている
- 3.点検は不要で、変状の通報があった場合のみ対応すればよい
- 4.健全性の診断区分は2段階で評価することとされている
▶正解と解説
正解:2
道路橋の定期点検は、原則として5年に1回の頻度で近接目視を基本に実施し、橋梁ごとに健全性をI(健全)からIV(緊急措置段階)の4区分で診断することとされている。遠望目視のみや点検不要とする運用は要領の趣旨に反する。
例8第三者影響度を考慮した対策に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.第三者影響度とは、構造物の耐荷力そのものの低下度合いを表す指標である
- 2.かぶりコンクリートの剥落により通行者や車両に被害を及ぼすおそれがある場合、耐荷性能に直結しなくても優先的に対策する必要がある
- 3.第三者影響度は構造物の美観のみに関する評価であり、安全とは無関係である
- 4.第三者影響度が高い箇所は、耐荷力が十分であれば一切対策しなくてよい
▶正解と解説
正解:2
第三者影響度は、剥落片の落下などによって第三者(通行者・車両等)に被害を及ぼす危険性の程度を表す。耐荷性能の低下に直結しない変状でも、剥落による人的被害のおそれがあれば、安全確保の観点から優先的に対策を講じる必要がある。
例9劣化が進行した構造物への対応として、補修・補強・供用制限・解体撤去の選択に関する記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.耐荷力が要求性能を下回る場合は、補修ではなく補強が必要となることがある
- 2.変状が軽微で性能低下が小さい場合は、外観上の対策や予防的補修で対応することがある
- 3.対策に多大な費用を要し、かつ機能継続の必要性が低い場合は、解体撤去も選択肢となる
- 4.供用制限(通行規制・荷重制限)は対策ではないため、健全度評価の結果として採用してはならない
▶正解と解説
正解:4
対策の選択肢には補修・補強に加え、供用制限(通行規制・重量制限)や解体撤去、さらには監視の継続も含まれる。応急的・暫定的に安全を確保する手段として供用制限は有効な対策の一つであり、採用してはならないとする記述は不適切である。
例10維持管理における記録・台帳・データベースに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.点検記録は補修が完了した時点で破棄してよい
- 2.点検・診断・対策の記録を蓄積・データベース化することで、劣化進行の把握や予測精度の向上に役立つ
- 3.記録は担当者個人が保管すればよく、組織的な台帳整備は不要である
- 4.台帳には構造物の諸元のみを記載し、変状や対策の履歴は含めない
▶正解と解説
正解:2
点検・診断・対策の記録を継続的に蓄積しデータベース化することで、経時的な劣化進行の把握や将来予測の精度向上、効率的な維持管理計画の立案が可能となる。記録は組織的に台帳整備して保存・活用すべきものであり、変状や対策履歴も含める。
例11維持管理計画の策定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.対象構造物の重要度や環境条件を考慮して点検頻度や方法を定める
- 2.想定される劣化機構や要求性能を踏まえて計画を立案する
- 3.予算や人員などの制約条件も考慮して計画を策定する
- 4.維持管理計画は構造物の重要度にかかわらず一律の点検頻度とすることが原則である
▶正解と解説
正解:4
維持管理計画は、構造物の重要度、置かれた環境条件、想定される劣化機構、要求性能、さらに予算・人員等の制約を総合的に考慮して策定する。重要度や環境に応じて点検頻度・方法を変えることが合理的であり、一律とすることが原則ではない。
例12診断技術者(コンクリート診断士)の役割と倫理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.依頼者の意向に沿うよう、危険な変状であっても健全と報告することが望ましい
- 2.客観的かつ公正な立場で調査・診断を行い、結果を正確に報告することが求められる
- 3.診断結果は専門家のみが理解できればよく、関係者への説明責任は問われない
- 4.自らの専門外の事項についても確証なく断定的に判断してよい
▶正解と解説
正解:2
診断技術者には、客観的・公正な立場での調査・診断と、結果の正確な報告が求められる。安全に関わる重大な変状を意図的に隠すことは倫理に反する。専門外の事項は専門家と連携するなど慎重に対応し、関係者への説明責任も果たす必要がある。
例13維持管理における健全度(健全性)の評価に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.健全度の評価は、点検で得られた変状の程度や範囲をもとに行う
- 2.健全度は劣化の進行に伴って時間とともに変化しうる
- 3.健全度の評価結果は、対策の要否や優先順位の判断に用いられる
- 4.健全度の評価は構造物の竣工時に一度行えば、以後は再評価する必要はない
▶正解と解説
正解:4
健全度は劣化の進行に伴い経時的に変化するため、点検のたびに最新の状態に基づいて評価・更新する必要がある。評価結果は対策の要否や優先順位の判断材料となる。竣工時の一度の評価で固定するという考え方は不適切である。
例14環境配慮(CO2削減・資源循環)の観点を踏まえた維持管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.既存構造物を長寿命化して延命することは、新設に伴う資源消費やCO2排出の抑制につながる
- 2.解体撤去で発生するコンクリート塊は再利用が困難なため、必ず埋立処分する必要がある
- 3.環境配慮は維持管理とは無関係であり、考慮する必要は一切ない
- 4.補修材料の選定において環境負荷は考慮対象に含めてはならない
▶正解と解説
正解:1
既存構造物を適切に維持管理して長寿命化することは、新設に伴うセメント製造由来のCO2排出や資源消費を抑制し、環境負荷低減に寄与する。解体コンクリート塊は再生骨材等として再利用が進んでおり、補修材料選定でも環境負荷の考慮が重要である。
例15点検の種類と目的の組み合わせとして、最も不適切なものはどれか。
- 1.初期点検 — 供用開始前後に初期状態を把握し、以後の点検の基準とする
- 2.定期点検 — 一定間隔で構造物全体の状態を継続的に把握する
- 3.臨時点検 — 地震・豪雨などの異常事象後に変状の有無を確認する
- 4.詳細点検 — 高所からの遠望のみで全体を概観する簡易な点検である
▶正解と解説
正解:4
詳細点検は、近接して目視や各種試験・計測を行い、変状の原因や程度を詳しく把握するための点検である。遠望のみの簡易な概観は詳細点検の目的とは逆であり、組み合わせとして不適切である。他の3つの組み合わせは妥当である。
例16JISや各種診断指針の位置づけに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 1.JISは試験方法や品質などの標準を定めるものであり、調査・試験の標準化に活用される
- 2.各種学協会の診断指針は法律であり、違反すると直ちに罰則が科される
- 3.JISや指針類は内容が固定されており、技術の進展があっても改正されることはない
- 4.診断にあたっては、いかなる場合も指針類を参照してはならない
▶正解と解説
正解:1
JISは試験方法・品質・寸法などの標準を定める日本産業規格であり、コンクリートの調査・試験の標準化に広く活用される。学協会の診断指針は技術的指針であって法律そのものではなく罰則を伴わない。JISや指針は技術の進展に応じて改正される。
例17維持管理における劣化予測(劣化進行の予測)に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1.過去の点検データを蓄積することで、将来の劣化進行を予測しやすくなる
- 2.劣化予測は対策の時期や方法を計画的に検討するうえで有用である
- 3.劣化予測には劣化機構に応じた予測モデルや経験的手法が用いられる
- 4.劣化予測は不確実性を一切含まないため、予測結果は将来必ずそのとおりになる
▶正解と解説
正解:4
劣化予測は材料・環境のばらつきやモデルの限界などから本質的に不確実性を伴い、結果が必ずそのとおりになるとは限らない。したがって点検による継続的な検証と予測の見直しが重要である。過去データの蓄積や劣化機構に応じたモデルの活用は予測の精度向上に有用である。
例18コンクリート標準示方書(設計編)における耐久性確保のための照査・規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.設計段階では強度のみを満たせばよく、かぶりや水セメント比は耐久性とは無関係に定める
- 2.想定する環境条件に応じて、かぶりや水セメント比の上限などを設定して耐久性を照査する
- 3.塩害が厳しい環境ほど、かぶりは小さく、水セメント比は大きく設定するのがよい
- 4.耐久性は供用後の維持管理のみで確保すべきもので、設計段階では考慮しない
▶正解と解説
正解:2
設計段階では、想定する環境条件(中性化・塩害等)に応じて、所要のかぶり・水セメント比の上限・最小単位セメント量などを設定し、鋼材腐食が生じないように耐久性を照査する。環境が厳しいほど厳しい値(大きなかぶり、小さな水セメント比)が要求される。耐久性は設計時から確保すべき要求性能の一つである。
例19道路橋定期点検要領における健全性の診断区分(Ⅰ〜Ⅳ)と措置に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.判定区分Ⅰは緊急に措置を講ずべき状態を表す
- 2.判定区分が進む(数字が大きくなる)ほど構造物は健全であることを示す
- 3.判定区分Ⅳは機能に支障が生じている等、緊急に措置を講ずべき状態を表す
- 4.健全性の診断は区分を設けず、変状の有無のみで判断する
▶正解と解説
正解:3
道路橋の健全性はⅠ(健全)〜Ⅳ(緊急措置段階)の4区分で診断され、判定区分Ⅳは構造物の機能に支障が生じている、または生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態を指す。Ⅲは早期に措置を講ずべき状態である。区分が進むほど対応の緊急度は高まり、健全とは逆になる。
例20コンクリート構造物の維持管理におけるモニタリング(常時監視・計測)の活用に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.モニタリングはひずみ・たわみ・ひび割れ等を継続的に計測し、劣化の進行把握に活用される
- 2.モニタリングで得たデータは劣化予測の検証や更新に利用できる
- 3.モニタリングは異常の早期検知に役立ち、予防保全的な維持管理に資する
- 4.モニタリングを導入すれば、点検や診断は一切不要となる
▶正解と解説
正解:4
モニタリングは、ひずみ・たわみ・ひび割れ・腐食センサ等により構造物の状態を継続的に計測し、劣化の進行把握や予測の検証・更新、異常の早期検知に活用される。点検を補完し、予防保全や効率的な維持管理に資する手段である。モニタリングを行えば点検や診断が全く不要になるという記述は誤りで、両者は併用される。
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