コンクリート診断士「劣化予測・評価」対策
劣化過程(潜伏期〜劣化期)、中性化や塩害の進行予測、余寿命の評価、健全度判定、性能(安全性・使用性・第三者影響度)の評価を扱う分野です。
収録問題数:23問(解説つき)/最終更新:2026年8月
「劣化予測・評価」で実際に問われること
収録している23問から20問を、本番と同じ四肢択一の形で抜粋しました。各問の「正解と解説」を開くと、正解と、解答の根拠になる要点が読めます。
例1鉄筋コンクリート構造物の塩害による劣化過程に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.潜伏期は、鋼材腐食が開始し腐食ひび割れが発生するまでの期間である
- 2.進展期は、腐食ひび割れの発生により腐食速度が増大する期間である
- 3.加速期は、腐食ひび割れの発生から耐荷力低下が顕在化するまでの期間である
- 4.劣化期は、鋼材位置の塩化物イオン濃度が腐食発生限界濃度に達するまでの期間である
▶正解と解説
正解:3
塩害の劣化過程は潜伏期・進展期・加速期・劣化期の4区分で整理される。加速期は腐食ひび割れ発生から腐食速度が増大し耐荷力低下が顕在化するまでの期間を指す。潜伏期は腐食発生限界濃度に達するまで、進展期は腐食開始から腐食ひび割れ発生まで、劣化期は耐荷力が大きく低下する期間である。
例2中性化の進行予測に用いる√t則に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.中性化深さは経過年数の平方根に比例して進行すると仮定する
- 2.中性化速度係数が大きいほど中性化の進行は速い
- 3.水セメント比が小さいほど中性化速度係数は大きくなる
- 4.屋外で雨掛かりがある部位は、雨掛かりがない部位より中性化が遅い傾向がある
▶正解と解説
正解:3
√t則では中性化深さは中性化速度係数に経過年数の平方根を乗じて表される。水セメント比が小さく緻密なコンクリートほど二酸化炭素の拡散が抑えられ、中性化速度係数は小さくなる。したがって水セメント比が小さいほど速度係数が大きいは誤りである。雨掛かり部は含水率が高く中性化が遅れる傾向がある。
例3コンクリート中の塩化物イオンの拡散予測に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.塩化物イオンの拡散はFickの第1法則を解いて予測するのが一般的である
- 2.見かけの拡散係数は水セメント比が大きいほど小さくなる
- 3.表面塩化物イオン量は飛来塩分環境が厳しいほど大きく設定される
- 4.見かけの拡散係数はコンクリートの材齢によらず一定である
▶正解と解説
正解:3
塩化物イオンの浸透予測は、非定常拡散を表すFickの第2法則の解(誤差関数を含む解)を用いるのが一般的である。表面塩化物イオン量は海岸からの距離など飛来塩分環境が厳しいほど大きく設定される。見かけの拡散係数は水セメント比が大きいほど大きくなり、材齢の進行に伴い低下する傾向がある。
例4鉄筋腐食速度と余寿命予測に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.腐食速度は環境の温度・湿度や塩化物イオン量の影響を受ける
- 2.腐食ひび割れ発生は鋼材の断面減少率がある限界に達した時期と関連づけられる
- 3.分極抵抗法で得た分極抵抗が大きいほど腐食速度は大きいと判断される
- 4.余寿命予測には腐食発生時期の推定と腐食進行速度の両方が必要である
▶正解と解説
正解:3
分極抵抗法では、分極抵抗は腐食速度(腐食電流密度)とおおむね反比例の関係にあり、分極抵抗が大きいほど腐食速度は小さいと判断される。したがって分極抵抗が大きいほど腐食速度が大きいは誤り。余寿命予測は腐食発生時期の推定と以後の腐食進行速度の評価を組み合わせて行う。
例5アルカリシリカ反応(ASR)の進行評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.ASRの進行には反応性骨材・アルカリ・水分の3条件が必要である
- 2.拘束が強い部材ではASR膨張は完全に抑制され全く生じない
- 3.ASRゲルは乾燥環境ほど膨張が活発になる
- 4.ASRによるひび割れは常に部材軸方向にのみ発生する
▶正解と解説
正解:1
ASRは反応性骨材・十分なアルカリ・水分の3条件が揃うことで進行する。鉄筋や外部拘束が強い方向では膨張は抑制されるが完全には抑えられず、拘束の弱い方向に膨張が偏る。水分供給が多いほど膨張は活発化し、ひび割れは拘束条件に応じて亀甲状や方向性をもって現れる。
例6凍害の劣化進行と評価に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.凍結融解の繰返し回数が多い環境ほど劣化が進行しやすい
- 2.水セメント比が大きく飽水度が高いほど凍害を受けやすい
- 3.適切なエントレインドエア(連行空気)は凍害抵抗性を向上させる
- 4.スケーリングはコンクリート内部の鋼材腐食を直接の原因とする変状である
▶正解と解説
正解:4
スケーリングは表面のモルタル分が薄片状に剥離する凍害特有の変状であり、凍結融解と凍結防止剤の作用などによって生じる。鋼材腐食を直接の原因とするものではない。凍害は凍結融解回数・飽水度が高いほど進行しやすく、適切な連行空気の確保が凍害抵抗性向上に有効である。
例7コンクリート構造物の性能評価における第三者影響度に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.第三者影響度は構造物の耐荷力の余裕度を表す指標である
- 2.かぶりコンクリートの剥落による落下は第三者影響度の評価対象となる
- 3.第三者影響度は構造物の美観のみを評価する指標である
- 4.第三者影響度は鋼材の腐食速度を直接表す指標である
▶正解と解説
正解:2
第三者影響度は、コンクリート片の剥落・落下などによって第三者(利用者・通行者など)に危害を及ぼす可能性を評価する性能項目である。かぶりの浮き・剥落による落下リスクが代表的な評価対象となる。耐荷力(安全性)や美観景観とは区別される独立した性能項目である。
例8劣化予測の不確実性とモニタリングに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.予測モデルの入力値には材料・環境・施工のばらつきが含まれ不確実性を伴う
- 2.モニタリングにより予測値を実測値で検証し予測を更新することができる
- 3.初期に得た予測結果は供用期間中に見直す必要は全くない
- 4.環境条件が想定と異なる場合は予測の前提を再検討する必要がある
▶正解と解説
正解:3
劣化予測は材料特性・環境作用・施工品質のばらつきに起因する不確実性を含む。モニタリングによって実測データを取得し、予測モデルや入力値を更新・補正していくことが重要である。初期の予測を供用期間中に一切見直さないという考え方は適切でない。
例9中性化速度係数に影響を与える要因に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.二酸化炭素濃度が高い環境ほど中性化速度係数は小さくなる
- 2.仕上げ材(塗装・タイル等)があると中性化速度係数は大きくなる
- 3.強度が高く緻密なコンクリートほど中性化速度係数は小さくなる
- 4.相対湿度が高いほど中性化速度係数は常に大きくなる
▶正解と解説
正解:3
中性化は二酸化炭素の拡散と水酸化カルシウムとの反応で進行し、緻密で強度の高いコンクリートほど拡散が抑えられ速度係数は小さくなる。二酸化炭素濃度が高い環境では速度係数は大きくなる。仕上げ材は二酸化炭素の侵入を抑え速度を低下させ、極端に高湿度では細孔が水で満たされ拡散が抑制される。
例10塩害における表面塩化物イオン量と腐食発生限界濃度の組み合わせに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.飛沫帯は海上大気中より表面塩化物イオン量が小さい
- 2.腐食発生限界濃度は鋼材位置の塩化物イオン濃度の上限管理値として用いられる
- 3.表面塩化物イオン量は時間とともに必ず減少していく
- 4.腐食発生限界濃度はコンクリートの配合によらず常に一定である
▶正解と解説
正解:2
腐食発生限界濃度は、鋼材位置の塩化物イオン濃度がこれを超えると腐食が開始すると考える限界値であり、鋼材腐食発生時期を判定する指標として用いられる。飛沫帯は最も塩分供給が厳しく表面塩化物イオン量は大きい。限界濃度は水セメント比など配合の影響を受け一定ではない。
例11劣化過程の各期における鋼材腐食の状態に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.潜伏期では鋼材腐食はほとんど進行していない
- 2.進展期では腐食が進行するが腐食ひび割れはまだ発生していない
- 3.加速期では腐食ひび割れにより酸素・水分の供給が増え腐食が加速する
- 4.劣化期では腐食が停止し変状が安定する
▶正解と解説
正解:4
劣化期は腐食の進行により鋼材断面減少が著しく、耐荷力やじん性が大きく低下する段階であり、腐食が停止して安定する期間ではない。潜伏期は腐食がほとんど進まず、進展期は腐食ひび割れ発生前の腐食進行段階、加速期はひび割れを通じた酸素・水分供給増で腐食が加速する段階である。
例12構造物の安全性に関する性能評価(耐荷力の照査)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.鋼材の腐食による断面減少は耐荷力の照査で考慮する必要がない
- 2.付着劣化やかぶりの剥落は耐荷力に影響を及ぼし得る
- 3.耐荷力照査では作用(荷重)側のみを評価し抵抗側は評価しない
- 4.中性化や塩害は使用性のみに関係し安全性には無関係である
▶正解と解説
正解:2
耐荷力の照査では、鋼材腐食による断面減少、付着性能の低下、かぶりの剥落などが部材の抵抗力に影響することを考慮する。作用(荷重)と抵抗(耐力)の両側を評価する。中性化や塩害による鋼材腐食は最終的に安全性(耐荷力)にも影響を及ぼす。
例13健全度の判定区分に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.健全度判定は変状の有無のみで決まり進行性は考慮しない
- 2.健全度判定では変状の程度・進行性・構造物への影響を総合的に評価する
- 3.健全度判定区分は調査者の主観のみで決定するのが望ましい
- 4.健全度判定は補修・補強の要否とは無関係に行われる
▶正解と解説
正解:2
健全度の判定は、現在の変状の程度に加え、その進行性や構造物の性能(安全性・使用性等)への影響を総合的に評価して区分する。判定結果は対策(補修・補強・監視・経過観察等)の要否や優先度の検討に結び付けられる。客観的な調査データに基づくことが重要である。
例14調査結果に基づく劣化原因の推定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.ひび割れのパターンや発生位置は劣化原因推定の手掛かりとなる
- 2.変状の状況だけでなく環境条件や配合・施工履歴も併せて判断する
- 3.複数の劣化要因が複合して作用している場合がある
- 4.ひび割れの形態が同じであれば原因は必ず一つに特定できる
▶正解と解説
正解:4
劣化原因の推定は、ひび割れの形態・位置・分布、変状の状況に加え、構造物の環境条件、コンクリートの配合や施工履歴などを総合して行う。同様のひび割れ形態でも乾燥収縮・温度応力・ASR・鋼材腐食など複数の原因が考えられ、複合的に作用している場合もあるため、一形態から原因を一意に特定できるとは限らない。
例15ASRの進行評価のための調査・試験に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.コア供試体の残存膨張量試験は将来の膨張可能性の評価に用いられる
- 2.偏光顕微鏡観察ではASRゲルや反応リムの有無は判断できない
- 3.ASRの進行は外観調査のみで定量的に完全評価できる
- 4.残存膨張量が大きいほど今後の膨張の可能性は小さいと判断する
▶正解と解説
正解:1
コア供試体を用いた残存膨張量試験(促進養生による膨張測定)は、その構造物が今後さらに膨張する可能性を評価するために有効である。残存膨張量が大きいほど今後の膨張可能性は大きいと判断される。偏光顕微鏡観察ではASRゲルや反応リムの確認が可能であり、室内試験と組み合わせて評価する。
例16使用性・美観景観に関する性能評価と第三者影響度の組み合わせに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.ひび割れからの漏水やエフロレッセンスは美観景観の評価対象となり得る
- 2.過大なたわみや振動は使用性の評価対象となる
- 3.かぶりの浮き・剥落の落下リスクは第三者影響度として評価される
- 4.ひび割れ幅は鋼材腐食や使用性に無関係で評価対象とならない
▶正解と解説
正解:4
ひび割れ幅は、水や塩化物イオンの浸入経路となって鋼材腐食を促進し得るほか、使用性や美観景観の観点からも評価対象となる重要な指標である。漏水・エフロレッセンスは美観景観、たわみ・振動は使用性、かぶりの浮き・剥落は第三者影響度の評価対象となる。
例17耐久性の照査と余寿命予測の進め方に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.余寿命予測は現時点の変状把握のみで将来予測を行わない
- 2.耐久性照査では劣化機構を特定したうえで適切な予測モデルを選定する
- 3.予測に用いる劣化機構は調査前にあらかじめ一つに固定する
- 4.余寿命は予測誤差がないため確定値として一意に定まる
▶正解と解説
正解:2
耐久性の照査・余寿命予測では、まず調査により劣化機構(中性化・塩害・ASR・凍害等)を特定し、それに応じた予測モデルや劣化指標を選定して将来の劣化進行を評価する。予測には材料・環境のばらつきによる不確実性が伴うため、モニタリングによる検証・更新が重要であり、確定値として一意には定まらない。
例18コンクリート構造物の劣化グレード(劣化度の段階区分)による評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.劣化グレードは数値が小さいほど劣化が重度であることを示す
- 2.劣化グレードは変状の程度や進行状況を段階的に区分して評価するものである
- 3.劣化グレードは竣工時に定まり、供用中に進行しても変化しない固定値である
- 4.劣化グレードは鉄筋の腐食速度を直接測定して求めた電流密度の値である
▶正解と解説
正解:2
劣化グレードは、変状の程度や進行状況をグレードⅠ(軽微)からⅣ(重度)などの段階に区分して評価する手法であり、外観上の変状の進展度合いを目安に判定する。グレードが進むほど劣化は重度で、対策の緊急度も高まる。グレードは劣化の進行に応じて移行するものであり、固定された値ではない。
例19塩害環境下での鉄筋腐食速度に影響する酸素・水分供給に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.乾湿繰返しを受ける部位では、酸素と水分が交互に供給され腐食速度が大きくなりやすい
- 2.常時水中にある部位は酸素供給が乏しく、塩分が多くても腐食速度は抑制されやすい
- 3.酸素の供給が多いほど腐食のカソード反応が抑制され、腐食速度は小さくなる
- 4.常時乾燥した部位では水分が不足するため、腐食速度は抑制されやすい
▶正解と解説
正解:3
腐食反応のカソード反応には酸素が必要であり、酸素と水分の供給が腐食速度を律する。乾湿繰返しを受ける部位は酸素と水分の双方が交互に十分供給されるため腐食速度が大きくなりやすい。常時乾燥では水分不足、常時水中では酸素不足で腐食は抑制される傾向にある。酸素供給が多いほど腐食が抑制されるとの記述は誤り。
例20コンクリート構造物の信頼性設計・性能照査における限界状態に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.終局限界状態は構造物の使用性に関する限界状態であり、安全性とは無関係である
- 2.性能照査では作用が抵抗を上回らないことを確認し、終局・使用などの限界状態を設定する
- 3.耐久性は要求性能には含まれず、性能照査の対象とされることはない
- 4.信頼性設計では材料や荷重のばらつきを考慮せず、安全率や部分係数は用いない
▶正解と解説
正解:2
性能照査では、作用(荷重等)が抵抗(耐力等)を上回らないことを照査し、安全性に関わる終局限界状態と、使用性に関わる使用限界状態などを設定する。耐久性は要求性能の一つとして照査の対象に含まれる。安全率や部分係数によりばらつきや不確実性を見込むのが信頼性設計の考え方である。
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