コンクリート診断士「劣化機構」対策
中性化・塩害・凍害・アルカリシリカ反応(ASR)・化学的侵食・疲労など、コンクリートの代表的な劣化機構とそのメカニズム、特徴的なひび割れを扱う分野です。
収録問題数:23問(解説つき)/最終更新:2026年8月
「劣化機構」で実際に問われること
収録している23問から20問を、本番と同じ四肢択一の形で抜粋しました。各問の「正解と解説」を開くと、正解と、解答の根拠になる要点が読めます。
例1コンクリートの中性化に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.中性化は、大気中の二酸化炭素が細孔溶液に溶解し、水酸化カルシウム等と反応して炭酸カルシウムを生成する現象である
- 2.中性化深さは、一般に経過時間の平方根に比例して進行する
- 3.中性化の進行に伴い、コンクリート細孔溶液のpHは上昇する
- 4.相対湿度が概ね50〜60%程度のとき、中性化速度は最も大きくなる傾向がある
▶正解と解説
正解:3
中性化は水酸化カルシウムが消費されるため細孔溶液のpHは低下する。中性化深さは√t則に従い、湿度が高すぎると二酸化炭素の拡散が、低すぎると反応に必要な水分が不足するため、中程度の湿度で速度が最大となる。
例2中性化に起因する鉄筋腐食に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.中性化フロントが鉄筋位置に到達する以前から、鉄筋腐食は活発に進行する
- 2.鉄筋位置の中性化により不動態皮膜が破壊され、水分と酸素の供給があれば腐食が進行する
- 3.中性化による腐食は塩化物イオンによる腐食と異なり、局部的な孔食を生じやすい
- 4.中性化残りが大きいほど鉄筋は腐食しやすくなる
▶正解と解説
正解:2
中性化が鉄筋位置に達するとpH低下により不動態皮膜が失われ、水分と酸素の供給下で腐食が進む。中性化による腐食は全面腐食的で、塩害のような局部的孔食とは異なる。中性化残りが大きいほど不動態が保たれ腐食しにくい。
例3塩害における塩化物イオンに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.鋼材腐食発生限界濃度は、一般に鉄筋位置で1.2kg/m3程度を目安とする
- 2.フリーデル氏塩として固定された塩化物イオンは、腐食に直接寄与しにくい
- 3.内在塩分は施工時に材料から持ち込まれ、外来塩分は供用後に表面から浸透する
- 4.海砂を使用した内在塩分は、表面からの拡散により濃度が深さ方向に増大する分布を示す
▶正解と解説
正解:4
内在塩分はコンクリート中にほぼ均一に分布するのが特徴で、外来塩分のように表面で高く内部で低い拡散型分布を示すのは外来塩分である。腐食発生限界は概ね1.2kg/m3、固定塩は腐食に寄与しにくいとされる。
例4塩化物イオンの浸透とかぶりに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.塩化物イオンの浸透は時間に正比例して進行する
- 2.かぶりを大きくしても鉄筋位置の塩化物イオン量には影響しない
- 3.拡散方程式による予測では、見かけの拡散係数が小さいほど浸透が遅い
- 4.水セメント比を大きくすると見かけの拡散係数は小さくなる
▶正解と解説
正解:3
塩化物イオンの浸透は概ね拡散方程式で表され、見かけの拡散係数が小さいほど浸透は遅くなる。浸透は時間の平方根に概ね比例し、かぶりが大きいほど鉄筋到達は遅れる。水セメント比が大きいほど拡散係数は大きくなる。
例5凍害に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.凍害は、コンクリート中の水分の凍結膨張により内部応力が生じることが一因である
- 2.AE剤により導入される連行空気泡は、凍結時の水分の逃げ場となり凍害抵抗性を高める
- 3.スケーリングは、凍結融解の繰返しにより表面が薄片状に剥離する現象である
- 4.気泡間隔係数が大きいほど凍害抵抗性は向上する
▶正解と解説
正解:4
気泡間隔係数が小さいほど水分の逃げ場が近く凍害抵抗性が高い。大きいと抵抗性は低下する。AEによる微細気泡が水圧の緩和に寄与し、スケーリングは表面薄片状剥離、ポップアウトは骨材部の局部剥離である。
例6凍害に特徴的な変状に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.ポップアウトは、吸水率の高い骨材粒子の凍結膨張により表面が円錐状に剥離する現象である
- 2.スケーリングは凍結融解よりも乾燥収縮の影響を強く受ける
- 3.凍害による微細ひび割れは、必ず鉄筋に沿って直線状に発生する
- 4.凍害は気温が氷点下になる地域でのみ発生し、日射の影響は受けない
▶正解と解説
正解:1
ポップアウトは吸水性の高い骨材の凍結膨張で表面が円錐状に剥離する現象である。スケーリングは凍結融解と凍結防止剤の影響が大きい。凍害ひび割れは亀甲状やうろこ状を呈し、日射による凍結融解の繰返しも影響する。
例7アルカリシリカ反応(ASR)の発生条件に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.反応性シリカを含む骨材が存在すること
- 2.細孔溶液中に十分なアルカリが存在すること
- 3.反応の進行と膨張に必要な水分が供給されること
- 4.骨材中の反応性鉱物量が多いほど常に膨張量も大きくなること
▶正解と解説
正解:4
ASRはペシマム量が存在し、反応性骨材の量が特定の割合のとき膨張が最大となり、多すぎても少なすぎても膨張は小さくなる。反応性骨材、アルカリ、水分の三条件が揃うことが発生の必要条件である。
例8ASRに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.ASRゲルは吸水しても膨張せず、ひび割れの原因とはならない
- 2.ASRによるひび割れは、無筋部では亀甲状、鉄筋拘束部では拘束方向に沿った形態を示しやすい
- 3.ASRの抑制対策として、アルカリ総量を増加させる方法が有効である
- 4.高炉スラグ微粉末やフライアッシュの混和はASRを促進する
▶正解と解説
正解:2
ASRゲルは吸水膨張してひび割れを生じ、拘束のない部位では亀甲状、鉄筋等の拘束を受ける部位では拘束方向に沿ったひび割れとなる。抑制にはアルカリ総量規制や混合セメント(高炉スラグ・フライアッシュ)の使用が有効である。
例9化学的侵食に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.硫酸はセメント水和物と反応し、二水石膏やエトリンガイトを生成して膨張・崩壊を生じさせる
- 2.下水道環境では、硫酸塩還元菌と硫黄酸化細菌の作用により生物起源硫酸が生成される
- 3.酸による侵食は、セメント水和物の溶解を伴うため一般に表面から進行する
- 4.硫酸塩侵食は、コンクリート表面に不溶性の保護皮膜を形成し劣化を停止させる
▶正解と解説
正解:4
硫酸塩侵食は石膏やエトリンガイトの生成による膨張で組織を破壊し、保護皮膜を形成して停止するわけではない。下水道では微生物由来の硫酸(コンクリート腐食)が問題となり、酸は水和物を溶解しながら表面から侵食する。
例10道路橋RC床版の疲労に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.床版の疲労は輪荷重の繰返しにより進行し、最終的に押抜きせん断破壊に至ることがある
- 2.疲労ひび割れは乾燥収縮ひび割れと同様、材齢初期に一度生じればその後進行しない
- 3.床版上面の水の存在は、ひび割れ面の摩耗を抑制し疲労を遅延させる
- 4.疲労による格子状ひび割れは、荷重の大きさのみに依存し繰返し回数とは無関係である
▶正解と解説
正解:1
RC床版は輪荷重の繰返しで格子状ひび割れが進展し、最終的に押抜きせん断破壊に至る。ひび割れ面への水の浸入は摩耗を促進し疲労を加速する。疲労は荷重と繰返し回数の双方に依存する。
例11すりへり・エロージョンに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.流水中の砂礫による摩耗は、アブレーションと呼ばれる
- 2.キャビテーションは、高速流水中で生じた気泡の崩壊により表面が壊食される現象である
- 3.すりへり抵抗性は、一般にコンクリート強度が高いほど向上する
- 4.キャビテーション壊食は、流速を高めるほど常に低減できる
▶正解と解説
正解:4
キャビテーションは流速が高く局部的な低圧で気泡が発生・崩壊することで壊食を生じるため、流速を高めると壊食は増大する傾向にある。砂礫による摩耗はアブレーション、すりへり抵抗は強度向上で改善される。
例12火害を受けたコンクリートに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.受熱温度が約500℃を超えると水酸化カルシウムが分解し、強度や弾性係数が著しく低下する
- 2.コンクリートは300℃程度までの加熱では必ず爆裂を起こす
- 3.受熱温度が高いほどコンクリートの色は変化せず、外観からの推定はできない
- 4.火害による強度低下は冷却後に完全に回復する
▶正解と解説
正解:1
約500℃を超えると水酸化カルシウムの脱水分解が進み、強度・弾性係数が大きく低下する。受熱温度の上昇に伴い表面色はピンク〜灰白色へと変化し推定の手がかりとなる。爆裂は高含水時等に生じ、強度低下は冷却後も回復しない。
例13エトリンガイトの遅延生成(DEF)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.DEFは、初期に高温履歴を受けたコンクリートで後にエトリンガイトが生成し膨張する現象である
- 2.蒸気養生やマスコンクリートの内部温度上昇が誘因となりうる
- 3.DEFによる膨張はコンクリートのひび割れや組織の劣化を引き起こす
- 4.DEFは外部から硫酸塩が供給されることが発生の必須条件である
▶正解と解説
正解:4
DEFはコンクリート内部に存在する硫酸塩成分から後発的にエトリンガイトが生成する現象で、外部からの硫酸塩供給は必須条件ではない。初期高温履歴(蒸気養生・マスコンの内部温度上昇)が誘因となり、後の膨張でひび割れを生じる。
例14各種劣化に特徴的なひび割れパターンに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.ASRと乾燥収縮はいずれも亀甲状ひび割れを生じうるが、ASRでは白色ゲルの滲出やひび割れ縁の変色を伴うことがある
- 2.乾燥収縮ひび割れは常に部材の長手方向に平行な直線として現れる
- 3.鉄筋腐食によるひび割れは、鉄筋位置と無関係にランダムに発生する
- 4.凍害によるひび割れは、常に部材を貫通する大きな単一ひび割れとして現れる
▶正解と解説
正解:1
ASRと乾燥収縮はともに亀甲状ひび割れを生じうるが、ASRではゲルの滲出や変色、湿潤部位での発生といった特徴で判別する。鉄筋腐食ひび割れは鉄筋に沿って発生し、凍害は表層の微細な亀甲状ひび割れが主である。
例15塩害による鋼材腐食の進行に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.塩化物イオンは鋼材表面の不動態皮膜を局部的に破壊し、孔食を生じさせる
- 2.腐食の進行には、アノードとカソードを結ぶ電気的回路と酸素の供給が必要である
- 3.コンクリートが常時水中にあり酸素供給が乏しい環境では、塩分が多くても腐食速度は抑制されやすい
- 4.塩化物イオンは腐食反応で消費され、腐食の進行とともに減少していく
▶正解と解説
正解:4
塩化物イオンは腐食反応の触媒的に作用し消費されず繰り返し腐食に関与するため減少しない。局部的な不動態破壊で孔食を生じ、腐食にはマクロセル回路と酸素が必要で、酸素供給の乏しい水中では腐食が抑制されやすい。
例16複合劣化に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.中性化と塩害が共存する場合、中性化により固定塩化物イオンが遊離し鉄筋位置に濃縮することがある
- 2.複数の劣化機構が共存しても、各機構は互いに独立で相互作用は生じない
- 3.凍害と塩害の複合では、ひび割れによる塩分浸透の促進は起こらない
- 4.ASRと鉄筋腐食は同時に進行することはない
▶正解と解説
正解:1
中性化により固定されていた塩化物イオンが遊離し、中性化フロント近傍で濃縮することで腐食が促進される複合劣化が知られる。各機構は相互に作用し、凍害ひび割れは塩分浸透を促進し、ASRと鉄筋腐食も併発しうる。
例17中性化速度と環境・材料条件の組み合わせとして、最も不適切なものはどれか。
- 1.水セメント比が大きい——中性化速度が大きい
- 2.屋外で雨掛かりがある——屋内乾燥環境より中性化が遅い傾向
- 3.高炉セメントB種の使用——普通ポルトランドセメントより中性化が遅い傾向
- 4.二酸化炭素濃度が高い環境——中性化速度が大きい
▶正解と解説
正解:3
高炉セメントB種は水酸化カルシウム量が少なく中性化に対する抵抗が小さいため、普通ポルトランドセメントより中性化が速い傾向にある。水セメント比増大やCO2濃度上昇は中性化を促進し、雨掛かりのある湿潤環境では中性化が遅くなる。
例18海洋環境における塩害の作用程度(環境区分)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 1.飛沫帯は乾湿の繰返しと酸素供給が顕著で、塩害環境として最も厳しい部位の一つである
- 2.海上大気中の飛来塩分による塩害は、海岸線からの距離が大きいほど作用が小さくなる傾向がある
- 3.常時海中にある海中部は酸素供給が乏しいにもかかわらず、塩害環境として最も厳しい部位である
- 4.干満帯は満潮位と干潮位の間にあり、塩分供給と乾湿の影響を受ける部位である
▶正解と解説
正解:3
塩害の厳しさは、飛沫帯(干満を繰り返し乾湿の激しい部位)で最も大きくなる。海中部は常時水中で酸素供給が乏しく腐食は進みにくい。海上大気中(飛来塩分)は海岸からの距離が大きいほど作用は小さくなる。したがって海中部が最も厳しいとの記述は誤りで、飛沫帯が最も厳しい。
例19凍結融解作用と凍結防止剤による複合劣化(塩害との関係)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.凍結防止剤の散布は凍害によるスケーリングを抑制する効果がある
- 2.凍結防止剤に含まれる塩化物イオンは鉄筋腐食を引き起こし、凍害と塩害の複合劣化を生じさせることがある
- 3.凍結防止剤は塩化物を含まないため、塩害とは無関係である
- 4.凍結防止剤による劣化は表面の美観のみに影響し、鉄筋腐食には関与しない
▶正解と解説
正解:2
寒冷地で散布される凍結防止剤(塩化ナトリウムや塩化カルシウム等)は、凍害によるスケーリングを助長するとともに塩化物イオンを供給して鉄筋腐食(塩害)も引き起こすため、凍害と塩害の複合劣化が生じやすい。融解時の浸水も加わり劣化が進行する。凍結防止剤が凍害を抑制したり塩害と無関係であるとの記述は誤り。
例20アルカリシリカ反応と区別されるアルカリ炭酸塩反応に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.アルカリ炭酸塩反応は反応性シリカとアルカリが反応してシリカゲルを生成する反応である
- 2.アルカリ炭酸塩反応はアルカリシリカ反応と全く同一の機構で進行する
- 3.アルカリ炭酸塩反応は石英質の砂利・砂を用いた場合に特有の反応である
- 4.アルカリ炭酸塩反応はドロマイト質石灰岩の脱ドロマイト化を伴い、シリカゲルによる膨張機構とは異なる
▶正解と解説
正解:4
アルカリ炭酸塩反応は、ある種のドロマイト質石灰岩(炭酸塩岩)がアルカリと反応して脱ドロマイト化を起こし膨張する反応で、反応性シリカによるアルカリシリカ反応とは機構が異なる。アルカリシリカ反応のようにシリカゲルを生成して膨張するのではない点が特徴である。日本ではアルカリシリカ反応が大半を占める。
※掲載しているのは、公式資料をもとに当サイトが独自作成した模擬問題です(実際の試験問題の転載ではありません)。採点・間違えた問題の自動記録・復習スケジュールまで使うには、下のボタンから演習モードでどうぞ。